「防衛」「航空エンジン(整備・スペア)」という“国策×構造需要”が交差するところに、いま資金が集まっています。IHIは2024年3月期に大きく崩れた一方、2025年3月期で急回復し、株価も直近1年で別物に変わりました。ただし、この銘柄は「上がったから強い」だけでは危険で、航空エンジンのコスト要因(追加検査等)と防衛の採算改善が、どこまで“再現性のある利益”として積み上がるかが勝負になります。
直近の株価と推移(2026/1/20)

株価(終値):3,619円(高値3,709円/安値3,525円)
騰落率(目安)
※「1カ月=2025/12/19終値」「3カ月=2025/10月末終値」「1年=2025/1月末終値」で算出(営業日完全一致ではありません)
| 期間 | 参照株価 | 騰落率 |
|---|---|---|
| 1カ月 | 2,765円(2025/12/19) | +30.9% |
| 3カ月 | 3,215円(2025/10月末) | +12.6% |
| 1年 | 1,339.3円(2025/1月末) | +170.2% |
チャート傾向(ざっくり)
- 中長期:強い上昇トレンド(2025年初の水準から段階的に切り上げ)
- 短期:上放れ後の高ボラ局面(高値3,709円まで伸び、押しも深くなりやすい)
過去5年の業績推移(IFRS・連結)
※単位:売上収益・営業利益=億円、EPS=円
| 期(年度末) | 売上収益 | 営業利益 | 営業利益率 | EPS |
|---|---|---|---|---|
| 2021/03 | 11,129 | 280 | 2.5% | 88.13 |
| 2022/03 | 11,729 | 815 | 6.9% | 439.77 |
| 2023/03 | 13,529 | 820 | 6.1% | 294.48 |
| 2024/03 | 14,932 | ▲956 | ▲6.4% | ▲761.90 |
| 2025/03 | 16,268 | 1,435 | 8.8% | 744.84 |
トレンドコメント
- 売上はこの5年で右肩上がり(構造需要が強い)。
- ただし利益は2024/03で大崩れ→2025/03で急回復というイベントドリブン色が濃い。
- EPSの振れが大きく、利益の質(再現性)が投資判断の核心。
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財務状態(2025/03期実績)
主要指標
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 総資産 | 22,403億円 |
| D/Eレシオ | 1.01倍 |
| 親会社所有者帰属持分比率(自己資本比率に近い) | 21.5% |
| ネットD/Eレシオ | 0.73倍 |
| 現金及び現金同等物 | 1,774億円 |
キャッシュ・フロー傾向
(2024年度=2025/03期)
- 営業CF:+1,776億円
- 投資CF:▲962億円
- 財務CF:▲345億円
- フリーCF:+814億円
営業CFは「運転資本の改善や税金還付等の一時要因」も含め大きく改善、という説明。
資金繰りの安全性(評価)
- 現金水準は厚く、CFも改善している一方、D/Eは1倍前後でレバレッジは軽くない。
- 航空エンジン関連でコストイベントが出るとCFが振れやすい点は要注意。
事業セグメント別の売上構成と利益構造(2025/03期)
| セグメント | 売上収益(億円) | 売上比率 | 営業利益(億円) |
|---|---|---|---|
| 資源・エネルギー・環境 | 3,659 | 22.5% | 284 |
| 社会基盤・海洋 | 5,246 | 32.2% | 210 |
| 航空・宇宙・防衛 | 7,577 | 46.6% | 1,079 |
| 合計(連結) | 16,268 | 100% | 1,435 |
※セグメント利益合計と連結営業利益は、全社費用等で一致しない点に注意。
読み解き
- 稼ぎ頭:航空・宇宙・防衛(利益貢献が大きい)
- 投資・整備の波:民間エンジン(整備費用・検査プログラム等で損益が振れやすい)
- 社会基盤・海洋、資源・エネルギーは“下支え”だが、テーマ性は航空・防衛が主。
競合企業との比較(3〜5社)
競合ピックアップ
- 国内:三菱重工業(7011)、川崎重工業(7012)
- 海外(航空エンジン領域):Safran、Rolls-Royce、GE Aerospace(参考枠)
比較表(実務で使える“相対比較”)
| 企業 | 主戦場 | 売上規模 | 収益性 | バリュエーション | IHIに対する位置づけ |
|---|---|---|---|---|---|
| IHI | 航空エンジン・防衛・社会インフラ | 中〜大(売上1.63兆円) | 変動大(24/03赤字→25/03高収益) | PER高め(後述) | 航空・防衛の“振れ”が特徴 |
| 三菱重工(7011) | 防衛・エナジー・航空宇宙 | 大(売上5.0兆円規模) | 比較的安定(事業利益・受注も厚い) | 市場の主役になりやすい | 「防衛・エナジー」主導の王道 |
| 川崎重工(7012) | 航空宇宙・車両・エネルギー等 | 中〜大 | 景気・案件の影響を受けやすい | — | 産業分散型の競合 |
| Safran | 航空機装備・エンジン(LEAP等) | 非常に大 | 比較的安定(グローバルMRO) | — | 民間エンジンの世界標準 |
| Rolls-Royce | 大型エンジン・防衛等 | 非常に大 | 改善局面になりやすい | — | 大型機・防衛で競合構造 |
※海外勢の数値・倍率は参照元により差が大きいため、ここでは“相対比較”に留めます。
IHIの相対的な強み
- 防衛と航空エンジン(整備・スペア)で、政策×構造需要の交点を持つ。
- 利益回復局面ではレバレッジが効きやすい(ただし逆回転も速い)。
弱み
- 航空エンジンのコストイベント(追加検査等)で、損益・CFが大きく振れる。
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成長ドライバー
- 防衛関連の追い風:日本は安全保障関連経費を「対GDP比2%水準」へ、という政策ドライバーが明示されている。
- 民間航空エンジンのアフターマーケット:運航増→整備・スペア需要が長期で積み上がる構造(IHIも販売台数・搭載機の広がりを示している)。
- エネルギー・インフラ更新:社会基盤・エネルギー案件は“景気循環”はあるが更新需要が残る。
ポジション評価
- IHIは「防衛の採算改善+民間エンジンの整備単価・数量」という、利益が乗りやすいレバーを握っている一方、同じレバーが逆風時の損失要因にもなる。
株価の割安性(バリュエーション)
| 指標(2026/1/20時点) | 数値 |
|---|---|
| PER | 34.01倍 |
| PBR | 8.13倍 |
| 配当利回り | 0.55% |
| EV/EBITDA(概算) | 約19.8倍(下記試算) |
EV/EBITDA(概算の作り方)
- 時価総額:3,918,507百万円(=約3.92兆円)
- 総資産:22,403億円、持分比率:21.5% → 持分(概算)=約4,817億円
- ネットD/E:0.73倍 → ネット有利子負債(概算)=約3,516億円
- EV(概算)= 時価総額 39,185億円 + ネット有利子負債 3,516億円 ≒ 42,701億円
- EBITDA:2,156億円
→ EV/EBITDA ≒ 19.8倍
評価
- 指標だけ見ると、“割安”というより「高期待が織り込まれた状態」。
- 高倍率を正当化できるかは、防衛の利益率改善が続くか/航空エンジンの不確実要因がどこまで収束するかに依存。
アナリスト評価とコンセンサス
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| コンセンサス | 「買い」優勢(みんかぶ) |
| 目標株価(コンセンサス) | 3,210円 |
| 現在値との乖離 | ▲11.3%(3,619円→3,210円) |
| 個別例 | IFIS:Neutral、目標株価2,600円(例) |
強気・弱気の主な理由(整理)
- 強気:防衛の改善、エンジン整備の単価・数量、利益回復の勢い
- 弱気:航空エンジンの追加コスト、利益の再現性、既に高い期待が織り込み済み
会社が抱える主要リスク(インパクト×確率)
| リスク | 内容 | インパクト | 発生確率(感覚) |
|---|---|---|---|
| 技術・品質(航空) | 追加検査・整備費用などコストイベント | 大 | 中 |
| 受注・予算(防衛) | 予算は追い風でも、案件採算・納期・仕様変更 | 大 | 中 |
| 財務 | D/E約1倍、案件でCFが振れやすい | 中 | 中 |
| マクロ | 景気後退で民間航空の稼働鈍化 | 中 | 低〜中 |
| 為替・資材 | 円安円高、素材高の影響 | 中 | 中 |
根拠となる背景(追加検査やCFの振れ、財務指標)は会社資料に記載。
今後3〜5年のシナリオ(売上・利益・株価レンジのイメージ)
※あくまで“思考整理”のためのレンジ。投資助言ではありません。
| シナリオ | 前提 | 売上イメージ | 営業利益率 | 株価レンジ(イメージ) |
|---|---|---|---|---|
| 強気 | 防衛の高採算が継続、航空のコスト要因が沈静化 | 1.8〜2.1兆円 | 9〜10% | 3,800〜5,000円 |
| 中立 | 防衛は堅調、航空は改善しつつも小さな逆風が残る | 1.7〜1.9兆円 | 7〜9% | 3,000〜4,200円 |
| 弱気 | 航空コスト再燃 or 受注遅延、利益の再現性が崩れる | 1.5〜1.7兆円 | 3〜6%(悪化時は赤字も) | 2,000〜3,200円 |
長期投資家としての判断(どちら寄りか)
結論:「買い寄りだが、“押し目待ち”の比率を高く」
理由(箇条書き)
- 防衛×航空整備という、長期テーマの中心にいる。
- 2025/03期で利益・CFが戻り、事業の地力は確認できる。
- 一方でPER/PBRは高く、良い未来は相当織り込み。
- 収益のブレ(航空コスト)が残るため、高値追いはリスクが見合いにくい。
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短期トレード(1〜3カ月)の視点
- ボラティリティ:高い(直近で上放れ)
- 出来高・売買代金:大きい(当日売買代金1,096億円)
- イベント:決算・業績見通し、航空エンジン関連の開示、防衛案件の材料
想定される値動きパターン
- 上振れ:高値更新(3,709円超)→踏み上げ、モメンタム継続
- 下振れ:急騰の反動+コンセンサス下回りで押し、3,200〜2,750円台の押し目試し
投資戦略の具体案(ミドルリスク・ミドルリターン前提)
※過度なレバレッジは前提にしません。
1)エントリー(分割)候補ゾーン
| 役割 | 価格ゾーン | 根拠イメージ |
|---|---|---|
| 1回目(浅めの押し) | 3,450〜3,550円 | 当日の安値圏〜心理節目付近 |
| 2回目(標準の押し) | 3,150〜3,250円 | 3カ月基準値3,215円付近(需給の節) |
| 3回目(深押し) | 2,700〜2,850円 | 直近の重要な下値目安(2025/12月末2,754円近辺) |
2)利確目標(複数段階)
| 段階 | 価格ゾーン | 目的 |
|---|---|---|
| 1 | 3,700〜3,900円 | 直近高値圏で一部利益確定 |
| 2 | 4,200円前後 | “期待織り込み”が更に進んだ局面で整理 |
| 3 | 5,000円近辺 | 強気シナリオが明確に進んだ場合のみ |
3)撤退ライン(損切り/シナリオ崩壊)
- 目安:2,650円割れ(深押しゾーンを明確に割る)
- あるいは、航空コスト再燃や業績前提の崩れが明確になった場合(価格よりファンダ優先)
総合評価(10点満点)
7.5 / 10
防衛と航空整備という長期テーマの中核で、2025/03期は利益・CFが大きく改善。一方で高い期待が既に織り込まれており、航空コスト要因の再燃が最大の不確実性。長期は買い寄りでも、戦略は「押し目分割」が合理的。
免責事項
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