IHI(7013)徹底分析(2026年1月20日時点)──「防衛×航空エンジン」で相場の中心に戻った重工の“次の分岐点”

日本株

「防衛」「航空エンジン(整備・スペア)」という“国策×構造需要”が交差するところに、いま資金が集まっています。IHIは2024年3月期に大きく崩れた一方、2025年3月期で急回復し、株価も直近1年で別物に変わりました。ただし、この銘柄は「上がったから強い」だけでは危険で、航空エンジンのコスト要因(追加検査等)と防衛の採算改善が、どこまで“再現性のある利益”として積み上がるかが勝負になります。

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直近の株価と推移(2026/1/20)

株価(終値)3,619円(高値3,709円/安値3,525円)

騰落率(目安)

※「1カ月=2025/12/19終値」「3カ月=2025/10月末終値」「1年=2025/1月末終値」で算出(営業日完全一致ではありません)

期間参照株価騰落率
1カ月2,765円(2025/12/19)+30.9%
3カ月3,215円(2025/10月末)+12.6%
1年1,339.3円(2025/1月末)+170.2%

チャート傾向(ざっくり)

  • 中長期:強い上昇トレンド(2025年初の水準から段階的に切り上げ)
  • 短期:上放れ後の高ボラ局面(高値3,709円まで伸び、押しも深くなりやすい)

過去5年の業績推移(IFRS・連結)

※単位:売上収益・営業利益=億円、EPS=

期(年度末)売上収益営業利益営業利益率EPS
2021/0311,1292802.5%88.13 
2022/0311,7298156.9%439.77 
2023/0313,5298206.1%294.48 
2024/0314,932▲956▲6.4%▲761.90
2025/0316,2681,4358.8%744.84 

トレンドコメント

  • 売上はこの5年で右肩上がり(構造需要が強い)。
  • ただし利益は2024/03で大崩れ→2025/03で急回復というイベントドリブン色が濃い。
  • EPSの振れが大きく、利益の質(再現性)が投資判断の核心。

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財務状態(2025/03期実績)

主要指標

指標数値
総資産22,403億円 
D/Eレシオ1.01倍 
親会社所有者帰属持分比率(自己資本比率に近い)21.5% 
ネットD/Eレシオ0.73倍 
現金及び現金同等物1,774億円 

キャッシュ・フロー傾向

(2024年度=2025/03期)

  • 営業CF:+1,776億円
  • 投資CF:▲962億円
  • 財務CF:▲345億円
  • フリーCF:+814億円
    営業CFは「運転資本の改善や税金還付等の一時要因」も含め大きく改善、という説明。

資金繰りの安全性(評価)

  • 現金水準は厚く、CFも改善している一方、D/Eは1倍前後でレバレッジは軽くない。
  • 航空エンジン関連でコストイベントが出るとCFが振れやすい点は要注意。

事業セグメント別の売上構成と利益構造(2025/03期)

セグメント売上収益(億円)売上比率営業利益(億円)
資源・エネルギー・環境3,65922.5%284
社会基盤・海洋5,24632.2%210
航空・宇宙・防衛7,57746.6%1,079
合計(連結)16,268100%1,435

※セグメント利益合計と連結営業利益は、全社費用等で一致しない点に注意。

読み解き

  • 稼ぎ頭:航空・宇宙・防衛(利益貢献が大きい)
  • 投資・整備の波:民間エンジン(整備費用・検査プログラム等で損益が振れやすい)
  • 社会基盤・海洋、資源・エネルギーは“下支え”だが、テーマ性は航空・防衛が主。

競合企業との比較(3〜5社)

競合ピックアップ

  • 国内:三菱重工業(7011)、川崎重工業(7012)
  • 海外(航空エンジン領域):Safran、Rolls-Royce、GE Aerospace(参考枠)

比較表(実務で使える“相対比較”)

企業主戦場売上規模収益性バリュエーションIHIに対する位置づけ
IHI航空エンジン・防衛・社会インフラ中〜大(売上1.63兆円)変動大(24/03赤字→25/03高収益)PER高め(後述)航空・防衛の“振れ”が特徴
三菱重工(7011)防衛・エナジー・航空宇宙大(売上5.0兆円規模)比較的安定(事業利益・受注も厚い)市場の主役になりやすい「防衛・エナジー」主導の王道
川崎重工(7012)航空宇宙・車両・エネルギー等中〜大景気・案件の影響を受けやすい産業分散型の競合
Safran航空機装備・エンジン(LEAP等)非常に大比較的安定(グローバルMRO)民間エンジンの世界標準
Rolls-Royce大型エンジン・防衛等非常に大改善局面になりやすい大型機・防衛で競合構造

※海外勢の数値・倍率は参照元により差が大きいため、ここでは“相対比較”に留めます。

IHIの相対的な強み

  • 防衛と航空エンジン(整備・スペア)で、政策×構造需要の交点を持つ。
  • 利益回復局面ではレバレッジが効きやすい(ただし逆回転も速い)。

弱み

  • 航空エンジンのコストイベント(追加検査等)で、損益・CFが大きく振れる。

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成長ドライバー

  • 防衛関連の追い風:日本は安全保障関連経費を「対GDP比2%水準」へ、という政策ドライバーが明示されている。
  • 民間航空エンジンのアフターマーケット:運航増→整備・スペア需要が長期で積み上がる構造(IHIも販売台数・搭載機の広がりを示している)。
  • エネルギー・インフラ更新:社会基盤・エネルギー案件は“景気循環”はあるが更新需要が残る。

ポジション評価

  • IHIは「防衛の採算改善+民間エンジンの整備単価・数量」という、利益が乗りやすいレバーを握っている一方、同じレバーが逆風時の損失要因にもなる。

株価の割安性(バリュエーション)

指標(2026/1/20時点)数値
PER34.01倍 
PBR8.13倍 
配当利回り0.55% 
EV/EBITDA(概算)約19.8倍(下記試算)

EV/EBITDA(概算の作り方)

  • 時価総額:3,918,507百万円(=約3.92兆円)
  • 総資産:22,403億円、持分比率:21.5% → 持分(概算)=約4,817億円
  • ネットD/E:0.73倍 → ネット有利子負債(概算)=約3,516億円
  • EV(概算)= 時価総額 39,185億円 + ネット有利子負債 3,516億円 ≒ 42,701億円
  • EBITDA:2,156億円
    → EV/EBITDA ≒ 19.8倍

評価

  • 指標だけ見ると、“割安”というより「高期待が織り込まれた状態」
  • 高倍率を正当化できるかは、防衛の利益率改善が続くか/航空エンジンの不確実要因がどこまで収束するかに依存。

アナリスト評価とコンセンサス

項目内容
コンセンサス「買い」優勢(みんかぶ)
目標株価(コンセンサス)3,210円 
現在値との乖離▲11.3%(3,619円→3,210円)
個別例IFIS:Neutral、目標株価2,600円(例)

強気・弱気の主な理由(整理)

  • 強気:防衛の改善、エンジン整備の単価・数量、利益回復の勢い
  • 弱気:航空エンジンの追加コスト、利益の再現性、既に高い期待が織り込み済み

会社が抱える主要リスク(インパクト×確率)

リスク内容インパクト発生確率(感覚)
技術・品質(航空)追加検査・整備費用などコストイベント
受注・予算(防衛)予算は追い風でも、案件採算・納期・仕様変更
財務D/E約1倍、案件でCFが振れやすい
マクロ景気後退で民間航空の稼働鈍化低〜中
為替・資材円安円高、素材高の影響

根拠となる背景(追加検査やCFの振れ、財務指標)は会社資料に記載。


今後3〜5年のシナリオ(売上・利益・株価レンジのイメージ)

※あくまで“思考整理”のためのレンジ。投資助言ではありません。

シナリオ前提売上イメージ営業利益率株価レンジ(イメージ)
強気防衛の高採算が継続、航空のコスト要因が沈静化1.8〜2.1兆円9〜10%3,800〜5,000円
中立防衛は堅調、航空は改善しつつも小さな逆風が残る1.7〜1.9兆円7〜9%3,000〜4,200円
弱気航空コスト再燃 or 受注遅延、利益の再現性が崩れる1.5〜1.7兆円3〜6%(悪化時は赤字も)2,000〜3,200円

長期投資家としての判断(どちら寄りか)

結論:「買い寄りだが、“押し目待ち”の比率を高く」

理由(箇条書き)

  • 防衛×航空整備という、長期テーマの中心にいる。
  • 2025/03期で利益・CFが戻り、事業の地力は確認できる。
  • 一方でPER/PBRは高く、良い未来は相当織り込み
  • 収益のブレ(航空コスト)が残るため、高値追いはリスクが見合いにくい

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短期トレード(1〜3カ月)の視点

  • ボラティリティ:高い(直近で上放れ)
  • 出来高・売買代金:大きい(当日売買代金1,096億円)
  • イベント:決算・業績見通し、航空エンジン関連の開示、防衛案件の材料

想定される値動きパターン

  • 上振れ:高値更新(3,709円超)→踏み上げ、モメンタム継続
  • 下振れ:急騰の反動+コンセンサス下回りで押し、3,200〜2,750円台の押し目試し

投資戦略の具体案(ミドルリスク・ミドルリターン前提)

※過度なレバレッジは前提にしません。

1)エントリー(分割)候補ゾーン

役割価格ゾーン根拠イメージ
1回目(浅めの押し)3,450〜3,550円当日の安値圏〜心理節目付近
2回目(標準の押し)3,150〜3,250円3カ月基準値3,215円付近(需給の節)
3回目(深押し)2,700〜2,850円直近の重要な下値目安(2025/12月末2,754円近辺)

2)利確目標(複数段階)

段階価格ゾーン目的
13,700〜3,900円直近高値圏で一部利益確定
24,200円前後“期待織り込み”が更に進んだ局面で整理
35,000円近辺強気シナリオが明確に進んだ場合のみ

3)撤退ライン(損切り/シナリオ崩壊)

  • 目安:2,650円割れ(深押しゾーンを明確に割る)
  • あるいは、航空コスト再燃や業績前提の崩れが明確になった場合(価格よりファンダ優先)

総合評価(10点満点)

7.5 / 10
防衛と航空整備という長期テーマの中核で、2025/03期は利益・CFが大きく改善。一方で高い期待が既に織り込まれており、航空コスト要因の再燃が最大の不確実性。長期は買い寄りでも、戦略は「押し目分割」が合理的。


免責事項

本記事は、情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨または勧誘するものではありません。
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